太陽光のコスト

個人的に作ったメモを転載。記事にもなったし、差支えないだろうということで。

(1) 発電量: 現状日本の建設請負契約においては、発電量保証の概念が浸透していないが、欧州では建設後1-3年間、発電量(Performance ratio)を保証することが一般的となっている。欧州における保証水準は、約80-81%程度。翻って日本の建設契約においては、様々な免責事項を設けた上で、78%程度で交渉が行われている模様。実際の発電量がどのように推移するかは今後の日本における観察が必要であるが、実際に2%程度の発電量の価値が異なれば、資産価値が2%異なる結果となる。現在導入されている3Wの太陽光発電システムで仮に2%程度の効率上昇が実現できれば、180億円程度の資産価値上昇となる(3,000MW x 現在価値3億円/MW x 2%)。

(2) Operation & Maintenance コスト: 伊・西等の太陽光IPP先進市場においては、O&Mはこの3年ほどで約Euro 50k/MWpから20k/MWpを下回るレベルまで低下してきている。日本市場においては、価格水準やスコープについての業界標準が存在しない。現状の本邦におけるO&Mコストを50千円/MWpと仮定し、これが20千円まで下げることができれば、上記(1)項と同様の試算をすれば、11%程度の資産価値上昇、約990億円の経済効果が見込まれる(3,000 x 現在価値3億円/MW x 2%)。

(3) 建設コスト: 現状欧州ではEuro1.2mil-1.5mil/MWpで建設が行われているが、これが日本では2.4mil – 2.9mil 程度と約倍の水準で取引されている。上記(1)(2)に述べたような資産価値向上効果に加え、建設コストを国際水準まで引き下げていくことが今後の更なる太陽光の進展(Grid parity達成による浸透促進)につながるものとみられる。

(4) 予測精度: 欧州においては、次第に太陽光・風力等の出力制御が困難な電源の導入により、電力網への負荷が増し、各電力網管理会社が先進的な取り組みを開始している。伊においては、GSE(再生可能エネルギー管理公社)が太陽光・風力などの分散型電源の発電量予測の作成に着手し、今後統計的手法を駆使して電力網への負荷を減じる手段を講じていくとされている。