馬場康雄・奥島孝康編『イタリアの社会』

イタリアの経済―「メイド・イン・イタリー」を生み出すもの (waseda libri mundi)

イタリアの経済―「メイド・イン・イタリー」を生み出すもの (waseda libri mundi)

1999年刊。

こういう章立て。
1章 イタリア女性
2章 家族と子ども
3章 学校と教育
4章 マスメディア
5章 信仰・教会
6章 言語生活
7章 スポーツ
8章 エコロジー運動
9章 マフィア
10章 社会保障
11章 移民と外国人労働者

こういう本は最近出ないのだが、やっぱり2000年前とかは欧州ブーム的なものがあったのだろうね。こういうのがもっと出るとよいと思う。マフィアの章、社会保障の章はちゃんと読んだが、ちゃんとしていた。特にマフィアの章は、本当によく調べたな、という感じ。戦後のマフィアの勢力拡張は伊の戦後史の興味深い背景になっている。<マフィアが第二次世界大戦後に復活したのは、アメリカ軍のシチリア上陸作戦を助けたためである。そのときアメリカ軍が犯罪組織であるマフィアを信頼したのは、マフィアが反ファシズムを標榜していたからだ。それはマフィアがファシズムに弾圧されていたためである。しかもマフィアは反共も標榜していた。これは戦後の政治秩序を考える上で都合がよかった。イタリアを自由主義の国として復興させること、共産主義化させないことは、アメリカの戦後戦略の要であったからだ。
戦後、マフィアはキリスト教民主党を支持し、癒着関係を作ってきた。キリスト教民主党は戦後一貫して政権を担ってきたが、その課題は共産党を封じ込め、自由主義体制を維持することだった。イタリア共産党は西欧で最大の共産党で、1970年代には総選挙で常に30%以上の票を得てきた。この強大な政党と対抗するため、キリスト教民主党は社会党や他の政党と組んで、公共事業を食い物にし、建設会社などから賄賂を集める「集金システム」を作ってきた。> (p. 156)

話が出来過ぎていて若干まゆつばという感もあるが、そういう一面があったことは事実だろう。いろいろ読めば読むほど、日本とイタリア、似たところが見つかってきておもしろい。

★★★★☆