平野克己『経済大陸アフリカ』

経済大陸アフリカ (中公新書)

経済大陸アフリカ (中公新書)

4月からアフリカと中東担当になったので。まずはこんなところから勉強をと思いまして。ちょっと前にコリアーの『最底辺の10億人』を読んでいたので、アフリカの抱える構造的な問題については多少理解していたつもりであったが、資源高騰の影響で状況がかなり変わっているということが分かった。

1980年代、90年代にアフリカ経済は長い停滞期を経験した。一人当たりGDPはこの間低下した。それが、2003年を期に回復に転じ、2003から2008年のサブサハラ・アフリカの年平均経済成長率は名目で18%に達した。人口増加率を経済成長率が下回ったのは、ジンバブエのみ。この間にアフリカ内部で特殊な要因が起きたわけではなく、原因は資源価格の高騰にある。原油価格の推移とサブサハラ・アフリカGDPの相関は0.94にも達している。

この期間のGDP成長を生産面からみると、鉱業・公共事業が25.4%を占める。主要産業の農業は16.4%。支出面からみると、個人消費が60.6%。固定資本形成は20.3%と相対的に小さい。しアフリカの消費はずっと低い水準で留まっていたから、これはある意味喜ばしいことなのであるが、結局のところ、これ農村部の所得向上に結び付かない。通常の発展形態としては、まず、肥料工業などから工業化が進展し、農業の効率化と農村の所得向上が見られ、農村住民の生活改善が消費の厚みを増やし、消費財製造業の発展につながる、というルートが見られるそうである。アフリカの成長にはこういうルートが見られない。

と、いう構造的な問題をさらっと的確に解説しており、また中国がアフリカ経済に与える影響なども一章を割いて解説していてこれもためになる。新書レベルとは思えない充実した一冊。

服部圭郎『道路整備事業の大罪』

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

著者は、都市計画、都市デザインを専門とする研究者。都市はどのようにあるべきかという観点で道路問題に切り込んでいて、提示される視点の一部は新鮮であった。
例えば、都市デザイン研究者の中では、自動車を街に入れない、ということが魅力的な都市作りの一つの手法として認識されている。コペンハーゲン、クリチバ(ブラジル)、ミュンヘン、フライブルグ、エジンバラ、ブタペスト、等々、名の知れた街にそういうコンセプトで作られた街区がある。クリチバの例では、商店街の各店主の反対を押し切り、連休中に商店街を歩行者専用道路に市長が強引に変更した。店主ははじめ猛烈に抗議したが、その後店の売上は2倍から3倍に増えたという。

そもそも、大きな道路が開通すると住民が減少するという現象が観察されている。これは、例えば、アクアラインが建設されるとき、推進者は木更津側の人口が増加し、商業が活性化することを期待・予測していた。結果はどうかというと、開通前の1996年の同市の人口は12.3万人だったが、これが2005年には12.2万人に減少し、商業統計によると期去らずの年間商業販売額は1997年から2002年の5年間で16%減少したという。そごう、ダイエー、西友は次々に撤退、地価下落率は全国一位となった。一言でいうと、散々な結果である。

こういう結果を見ても、まだ大規模道路計画の立案をやめない政治家・政策当局を筆者は強く批判している。至極もっともな主張だと思うし、こういうような道路計画を推進している地方の政治家の方に、読んで意見を聞かせてほしいと思う。あと、当時の木更津市長にも。