ジェイムズ・エルロイ『USA アンダーワールド』

アメリカン・タブロイド 上 (文春文庫)

アメリカン・タブロイド 上 (文春文庫)

アメリカン・タブロイド 下 (文春文庫)

アメリカン・タブロイド 下 (文春文庫)

エルロイを読み漁っていた時期に読んだ。LA4部作に続いて、これはUSA(たしか)3部作のひとつ。
主人公たちはLA市警と犯罪者たちから変わって、アメリカ全体に。JFKが色情狂みたいに描かれていてびっくりする。話のスケールが大きくなったものの、LA4部作にあった濃密な空気がなくなってしまった。

エルロイを読むときは、酒、セックス、ドラッグ、金、暴力、とか、そういう何というか、生々しい、理性というより野生に訴える何かを求めて読む。もう個人の欲望丸出しで気分悪い人間ばかり出てくるのだが、彼の小説を読むと、いやー人間って動物だなあ、みたいな妙な感慨を覚える(それは例えば花村萬月を読むときに似ている)。しかし、アメリカ全体が舞台になると外交とか政治とか、愛国心とか、個人の欲望とは違うレベルのかけひきが主題となり、生々しさが薄れる。EGOを描いたのがLA4部作だとすると、こっちの方は少しSUPEREGOみたいな、規範とか倫理とか国家の使命とかそういう要素が入ってきて、めんどうくさい。こういう小説は手嶋龍一とか(もう読まないけど)、ジョン・グリシャムとかそういう人に書いてもらえばよいです。