サイモン・シン『宇宙創成』

宇宙創成(上) (新潮文庫)

宇宙創成(上) (新潮文庫)

宇宙創成(下) (新潮文庫)

宇宙創成(下) (新潮文庫)

★★★★★

相変わらず最高におもしろいな。
シンは、淡々と事実を解説するのではなく、ドキュメンタリー風に科学の進歩を描く。科学法則というのは後付けで説明を聞くと簡単に聞こえるが、それらが発見された当時には相応の興奮をもたらしたはずだ。そういう興奮を読者に伝えることができる書き手はあまり多くない。ほんとにね、教科書も事実の羅列だけじゃなくてこういう風に作ればいいのにね。例えば、こんな箇所なんかどうだろう。<ペンジアスにとっては、突如としてすべてが収まるべきところに収まった。彼はついに、自分の電波望遠鏡につきまとっていた雑音がどこからやって来たのか、それがどれほど重大な意味をもつかを理解した。あらゆる方角からやってくる雑音の謎は解けた。その雑音は、鳩とも、ぞんざいな配線とも、ニューヨークとも関係がなく、宇宙創造と関係があったのだ。> (下巻 p. 238)

このペンジアスさんの偶然の発見によって、この宇宙に背景放射(CMB放射)が満ちていることが分かった。これはビッグバン理論を支持する重要な証拠となった。「宇宙創造と関係があったのだ」って、分かった時はびっくりするよね。そういう瞬間は、多分、誰の人生にもある。宇宙創造に関係があることは少ないと思うけど、少なくとも自分の将来を左右する一瞬は意外と小さなところに潜んでいるかもしれない。そう思うと(思えると)毎日少しは張りのある生活が遅れそうじゃないか。