鈴木貴博『カーライル』
2008年5月刊
カーライル―世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略
- 作者: 鈴木貴博
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/05/16
- メディア: 単行本
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キャリー&モリス『ブラックストーン』を読んで業界に興味を持って購入。著者は元ボストン・コンサルティングのお方。
うーん、ケーススタディ以外の箇所で書かれている、一般論(日本の資本市場・経営体制の特徴、PEの潜在的可能性、etc)に特に反論はないのだが、やはり『ブラックストーン』に比べると迫力不足なのは否めないな。本書では、カーライルが日本で手掛けた案件として、コバレントマテリアル、キトー、クオリカプス、ウィルコムをあげているが、結果は以下の通りとなっている。
(1) コバレント:東芝系半導体材料製造会社。ユニゾンとカーライルで830億円で買収。ただ、その後うまく行っているようには見えず、以下のニュースでも苦戦のあとが見える。事業の一部を台湾企業に売却。この事業を立て直す資金を得るためにMBOを行ったのだったが、おそらく投下資金を回収できていないだろうと思われる。本書では300億円の追加投資が必要だったとされている。
http://blog.goo.ne.jp/sunsetrubdown21_2010/e/1f28fa8075882fa2dfecf9e4fceb4cbf
(2) キトー:130億円で買収。工場内物流設備大手。これはうまく行った例で、買収後の新機軸(北米市場と中国市場の強化等)が成功し、再上場し利益を得ている。
(3) クオリカプス:塩野義傘下の薬品カプセルメーカー。取得価額は書かれていないので分からないが、以下ニュースから見ると、成功ではある模様。
http://blogos.com/article/52910/
(4) ウィルコム:これが最大の問題案件で、実は著者田中氏はこの案件が非常に気になって(日本の通信業界の風雲児になるのではないかと思って)カーライルへの接触を開始したのだが、2200億円で買収したこの案件、結果会社更生法を申請して出資がパーになった。
ということで、ウィルコムの結果がものすごく足を引っ張っているのではないかと懸念されるが、そのあたりどうなのだろうか。2013年視点で見ると、こんなにウィルコム案件持ち上げてよいのか、と疑問符がつく一冊。現在視点での、著者の総括的な論を読みたい。
★★☆☆☆