ヘールト・マック『ヨーロッパの100年』

ヨーロッパの100年(上) 何が起き、何が起きなかったのか

ヨーロッパの100年(上) 何が起き、何が起きなかったのか

ヨーロッパの100年(下) 何が起き、何が起きなかったのか

ヨーロッパの100年(下) 何が起き、何が起きなかったのか

なんかAmazonの「おすすめ」に出てきておもしろそうな感じだったので買ってみた。
実際おもしろいのだが、冗長。もともとオランダの何とかっちゅう新聞に、ほぼ前世紀の終わりに、一年くらいかけて連載されていたものらしいから、本で読むより連載で読んでた方が楽しかっただろう。

あとね、トーンが暗い。各章のタイトルからして暗い。「二十世紀の夜明け」「第一次世界大戦」「ロシア革命と虐殺」「ワイマール共和国とヒトラー台頭」「ファシズムからスペイン内戦へ」「第二次世界大戦勃発」「ヒトラーの絶滅収容所とスターリンの強制収容所」「戦場の街・戦火の村・そして抵抗運動」「終戦の黙示録」、ここまで第二次大戦。で、ちょっと落ち着くかと思ったら、、、「戦後を吹き荒れた悲劇」「ソ連崩壊・東欧圏の解体」「ミレニアム直前の地獄」とくる。。。20世紀ってそんなに暗い時代だったのか?!?『アメリカの100年』とか『日本の100年』だったらぜんぜん違うトーンになるでしょうに。実際、橋本治の『二十世紀』なんかはかなり明るいトーンでしたよ。

まあしかし、欧州の二十世紀ってあんまり明るくなかったんだろうね。第一次大戦も第二次大戦も主戦場になった。冷戦の前線でもあった。本書で今まで知らなかった悲惨な話がたくさん学べる。第二次世界大戦中のユダヤ人の生存率が一番低かった国はどこか?ラトヴィア。1.9%だった。ヴィシー政権の偽善(ド・ゴールの陰に隠れ歴史から抹消されているが、対独協力を積極的に行った)。スペインの長い内戦(フランコは70年代まで生きていて、スペイン国内には強制収容所がたくさんあった)。文化大革命をルーマニアに移植したチャウシェスク(たとえば全ての女性が5人の子どもを産むことを義務付けられた)。

こういう陰惨な歴史を経てなお、というか経たからこそかもしれないのだが、第二次大戦後の欧州が比較的平穏に保たれているのはとても、なんというか、大事にすべき事実だ。少数の独裁者の下、多数の犠牲者が出た。過去の大いなる絶望から出発して、未来へのささやかな希望を抱けるようになってきた。

欧州の平和の立役者はたくさんいると思うが、本書を読むとジャン・ジュネの活躍が目立つ。日本の教科書にはあまり出てこないと思うし、ぼくもよく知らなかったが、欧州共同体を作った立役者で、チャーチルとド・ゴールの仲立ちをしたとかしないとか書いてあった(長いので該当箇所見つけられず)。第二次大戦で汚名をかぶったフランスの名誉回復に寄与しています。次はこの人の伝記でも読んでみるわ。

しかしヨーロッパ人の名前、カタカナでたくさん出てくるけどほんと覚えられんわ。せっかく読んだのにな。目次付けてほしかったよ。