サイモン・シン『暗号解読』

暗号解読(上) (新潮文庫)

暗号解読(上) (新潮文庫)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

これは傑作。サイモン・シンは尊敬しております。

暗号の原理は基本的に単純で、送信者と受信者が「鍵」(解読法)を共有していて、その鍵を使って原文を暗号化したり(「乱文」にする)戻したりする。鍵の管理、鍵の作成方法とかが鍵になる。もっとも原始的な方法のひとつは、例えばこんなの(ペルシアだかギリシアだか忘れたが実際に使われた方法)。伝令のおにいさんの頭に入れ墨をする。しばらくすると髪の毛が生えてきて入れ墨が読めなくなる。そうすると、敵につかまっても暗号は読めないが、「鍵」を知っている受信者は、伝令の髪を剃って原文を読めばよい。単純だけど、よくできている。

そういう原始的な方法が徐々に進歩して、第二次大戦中のドイツ軍なんかは何重にも管理された暗号「エニグマ」というのを開発した。絶対に破ることができないと言われていたエニグマを解読していくチューリングほか連合軍の解読者たちのひらめき、の箇所なんか、さいこーです。

基本的に地味なテーマなのだと思うが、暗号作成者と解読者をめぐる、永遠に続くドラマを描いて飽きさせない。人間は意味を求めてやまない生き物だから、意味不明な乱文から明瞭な意味が立ちあがってくるのを見て、なんか嬉しくなるのだ。女の子の言うことも暗号まみれみたいなものだが、うまく「鍵」を共有できていれば暗号解読の楽しみが味わえる。