橋本健二『「格差」の戦後史』
「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)
- 作者: 橋本健二
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/10/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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しかし、そんなに感心しなかったな。企画の時点で「格差」というのが注目を浴びていたテーマだったのがよかったのだろうか。それとも朝日新聞としては、やっぱりこういうテーマがよいのだろうか。
著者は、さまざまな統計データベースを分析して、日本の戦後の格差の推移を分析する。戦後、一旦格差は縮小に向かい (戦前の特権階級が戦後一時的に没落したことと戦後の経済改革の影響)、その後50年代の経済復興時に拡大、60-70年代は縮小(「一億総中流」の時代)、80年代以降はずっと拡大傾向にあることを明らかにする。この分析は見事で明瞭だと思うが、しかし著者も認めるように、格差に関する言説は全て何らかの価値判断と結び付いているわけだから、そういう主張を避けて事実の分析だけにとどめるというスタイルは、やはり(全然問題ではないが)つまらないのではないかと思う。<現代日本の格差の問題を、戦後日本の歴史的文脈に位置づけることを目的とする本書では、こうした(※格差への対処に関する)政策論について論じることを禁欲しておきたい。しかし、格差や貧困を解決すべき問題と考えるなら、階級構造という社会の骨格部分に対する認識と、この骨格部分の改革を含めた大胆な政策論とが必要になるということだけは明らかである。> (p. 213)
全然「禁欲」してなくて、このトーンから、作者は「階級構造」の「改革」をしたいということが明らかですね。そしたらそういう主張をすればよいのです。NHKじゃないんだから。中立公正とか、この手の話で誰も求めていないのです。大学のとき、何のテーマか忘れたが、問題点だけ指摘して自分の意見を書かなかったら、「途中まではよいが、最後は敵前逃亡している」と書かれた。まさにそういう一冊。