「NHKスペシャル」取材班 『アフリカ - 資本主義最後のフロンティア』

アフリカ―資本主義最後のフロンティア― (新潮新書)

アフリカ―資本主義最後のフロンティア― (新潮新書)

NHK取材班が、エチオピア、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナ、南アフリカの8カ国を取材した記録。章ごとに担当のディレクターが違って、ルポの出来不出来の波が激しいが、概ね、ちゃんと読める一冊。

一章:ケニア、ウガンダでの携帯電話の普及の話。資源に比較的乏しい両国が、人口の多い消費市場ということで海外投資を呼び込んでいるという絵姿は、アフリカ=資源投資、というステレオタイプから少し離れた切り口で、おもしろい。本書の白眉。同様に第三章でも、エチオピアに中国企業が携帯電話の中継基地を作るという話が紹介されていて、同様の切り口。

第二章:ルワンダ。あの虐殺の惨事から、どういう成長の軌跡をたどっているのかを追ったルポ。虐殺の被害に遭ったツチ族が再び経済界に戻ってきて躍進しているというのはある意味素晴らしいことなのだろうし、ここで紹介されている不動産王のキャラクターも大変興味深いのだが、今度は多数派フツ族が「虐待される」というおそれから難民化しているとか、げんなりする話も多い。安心してこの国の将来を語れる日は遠い。

三章は上記の通りで割愛。

第四章:タンザニア(金)、ボツワナ(ダイアモンド)の資源経済の話。どこかで聞いたような話でありきたりに思える。読み飛ばしてよい。

第五章:ハイパーインフレ後のジンバブエの話。米ドルを導入してインフレは収束したが、おこるべき大きな産業もなく、見通しは不透明。しかし、米ドルを導入して、公務員給料とか、そういうのはどうしているのだろうか。外貨稼ぐ手段もないだろうし。こういうトピックを扱うなら、興味本位で書くだけでなくてそういう基本的な疑問にも答えてほしいと思う。いまひとつ。

第六章:南アフリカ。「格差」を経済成長のドライブにする、という副題で、サブサハラ地域一番の経済大国である南アフリカに殺到する出稼ぎ労働者の日常を描いている。ワールドカップに(本書刊行はW杯前)かこつけてやたらポジティブトーンで通すのはどうかと思うが、地域の大国が近隣諸国に労働機会を与えているというのは大変よいことである。治安の問題はなかなか解決しないのだろうが、経済移民の交流から経済も平和も進展していくものと信じたい。

以上の6章。