白戸圭一『資源大陸アフリカ』
- 作者: 白戸圭一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/02/07
- メディア: 文庫
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長く読み継がれていく価値のある名作ルポだと思う。
著者は、毎日新聞の記者で南アへの駐在経験がある。駐在中に経験した事案のうち、記事に書ききれなかったことをこの本にまとめたとのこと。南アへの人身売買が行われているモザンビーク、石油の発見に振り回されたアルジェリア、内紛を続けるスーダンのダルフール、国連監視下のコンゴ、無政府国家ソマリアなどを取材している。これら取材対象から分かるように、必ずしも「資源」とは関係ない場所も取り上げられているので、タイトルは少し変えた方がいいように思うが、こういう題の方が本としては売れるのかもしれない。
何がすごいのか、うまく書けないのだが、一言で表現するなら、ジャーナリズムの力を感じさせてくれるということなのだと思う。芸能人や政治家や事件の容疑者を追いかけまわし、どの媒体も同じようなソースから同じような情報を得て、そして例えば事故の取材のときなんかは、被害者遺族なんかにものすごく迷惑をかけながらそういう取材をして、少しだけ味付けを変えて記事にする。そういうのがジャーナルの仕事ではないはずなのである。本来、読者が知らなくて、しかし知るべきことを、事実を曲げずに、可能な限り一次情報源にあたった内容をもとに記事にして報道するというのが理想的なあり方なのだと思うが、そういうことを白戸記者は本書でやり遂げている。一次情報源というのは、当然、紛争当事者だったり人身売買の仲介人だったりするわけで、そこに辿りつくのは容易なことではない。新聞記事とかではそういう話は普通読めないが、本書にはそういう苦労が描かれており、それがまたよい。特にソマリア入国のくだりや、モザンビークの人身売買グループへの接触のくだりはちんけなスパイ小説よりおもしろい。
描かれているのは信じがたいような悲惨な状況だったりするので、「おもしろい」というのは不謹慎なのかもしれない。しかし、おもしろくなければ人はそういうレポートを読まない。そういう意味で、読まれるレポートを書いた著者の功績は大きい。