沢木耕太郎 『敗れざる者たち』

敗れざる者たち (文春文庫)

敗れざる者たち (文春文庫)

沢木耕太郎『敗れざる者たち』読了。これは名作だと思った。≪"燃えつきる" --- この言葉には恐ろしいほどの魔力がある。正義のためでもなく、国家のためでもなく、金のためでもなく、燃えつきるためだけに燃えつきることの至難さと、それへの憧憬。あらゆる自己犠牲から、あとうかぎり遠いところにある自己放棄。≫ (p. 56) というテーマの短編が6つ。
沢木も言及しているが、同じテーマで、例えば燃えつきる海の男を『老人と海』で書いたのがヘミングウェイだった(そのルーツは『白鯨』だったりするのだろう)。日本だと、『走れメロス』とか、『坊ちゃん』とか。燃えつきたかったけど不完全に終わる悲哀を書いたのがフィッツジェラルドの『ギャッツビー』なんだろう。本作は、そういう、作家が惹かれる伝統的なテーマについて、直球で挑んで、見事に読ませる一冊になっていると思う。