星野眞三雄『道路独裁』
- 作者: 星野眞三雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/16
- メディア: 単行本
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全体としては、田中委員長の方針を支持する一方で、はしごを外した小泉、独善的な言動で委員会を混乱させた猪瀬、政治的配慮で委員会を死に体に追いやった今井委員長を批判する内容となっている。特に猪瀬に対する批判は手厳しい。
自分以外はみんな「バカ」で、「俺」だけがわかっていて、一生懸命やっている。その役割は、小泉改革を「格好よく」するために、自民党道路族と国交省道路局が許容できる範囲で「落としどころ」を見つける。最初から、より良い民営化会社を追及するのではなく、建設費の値切り交渉こそが重要 ---。彼が求めていたのは、道路公団民営化によって「政と官」の利権構造を壊し、建設の判断を「民」に委ねるという理念ではなく、小泉改革イメージの「演出」と建設費の値切り、ファミリー企業つぶしだったのだ。 (pp. 276-7)
どうでもよいが、このかぎかっこにはほとんど意味はない。無意味にかぎかっこを多用する文体は朝日新聞では直されないのだろうか。
ともかく、こういう箇所で著者が考えていることがよく分かるの。政と官の利権構造を壊すことが重要と彼は考えているようだが、この利権構造というのは便利なことなので、いったい何を指しているのかよく分からない。どうなったら「構造」が壊れるのか、人によって考え方は違うだろ。ファミリー企業に著者の言う、利権があることも確かだし、それをつぶそうとするのは悪いことではない。また、「建設の判断を『民』に求める」というのは民営化推進委員会の決まった方向性ではなく、「組織と採算を検討し」最適なかたちを求めるというのが委員会のミッションだったわけだ。道路は明らかに公共の利益になる資産だし、それをどうやって作り管理するか、最適な方法を検討するのは簡単ではない。わたしも、著者と同様、国幹会(国土化開発幹線自動車道建設審議会)の1時間半の議論で1兆8700億円の道路建設が決まる(09年4月27日会合)というような決め方は全くばかげていると思うが、単に民営化すればうまく行くというものでもない。とにかく、利権をむさぼっている人はけしからん、そういうやつらは退場すべき、という感情は本書に良く出ているが、要するに著者のは感情的理想論であって、例えばこういうジャーナリストが民営化委員会にいたとしても、政治家や官僚にこてんぱんに料理されてしまっていただろう。
記者だけあって、事実確認についてはきっちりしているし、各人の発言・立場の検証も無難にできていると思うが、そういう意味で理想論に流れ過ぎている一冊。